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「ここの社長の借金を取りに来たんだよ。会社が潰れたって、そんな事は俺は関係ねえし。
家にもいねぇから、工場まで来てみたら、でっかい蜘蛛に何度も襲われたんだよ。んで、気がついたらこんなとこに!だから、早くしないと俺たち食べられちまうぜ!」
杉村は借金取りか。
タイミング悪く、蜘蛛に捕まったと言うワケだな。
「ここにどの位閉じ込められてるんだ?」
「数日前からだと思うけどな。時計がないから分からない。いや、もう少し経つか?」
そうだ、俺もここから出れる保証はない。
冷静に行動しなくては。
俺は携帯電話を出し、時間を見る。
どうやって、水夜に連絡しようか……
「どうやったらここから出れる?助けてくれよ!」
杉村が俺の横で叫んでいるが、俺だってどうしたらいいのか分からない。
むしろ杉村に引きずり込まれたのに。
「おい!お前名前何て言うんだよ!金なら払うから助けてくれ!」
杉村は俺の肩を掴んだが、俺は肩を勢いよく振って、杉村の手を払い退けた。
「杉村、お前、何日もこんなとこに閉じ込められて、腹は減らないのか?喉は乾かないのか?」
「え……?」
「こんなところにいて、出口も探そうとしただろう?何で疲れてない?おかしいと思わないのか?」
杉村は自分の手の平を見た。
頬を触り、腹もゆっくりと触っている。
「本当にここへ来て数日か?本当にそう思うか?」
「な、何だよ、テメエ…何もんなんだ?」
震える手で俺を掴もうとする。
俺は後ろに下がり、杉村から距離を取った。
「助けてくれよ……助けてくれよ。一体ここはどこなんだ!お前、俺を助ける為にここに来たんじゃねぇのかよ?」
「俺は!杉村、お前が、俺を捕まえて連れて来たんだろう!?俺だって、どうやってここから出るかなんか知らねぇ!」
杉村がようやく大人しくなった。
そして、肩を落として大きなため息をついた。
「俺、もしかして、死んでるのか?」
杉村が、ボソッと呟く。
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