孤独

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「……そうだ。お前が死んでから何十年も経ってる。俺は蜘蛛の真相を解きに連れと一緒に、この工場へ来た。でも、でっかい蜘蛛だなんて初耳なんだよ」 「……そうか。 …そうか。俺、死んでんだ……何十年も知らずにここにいたんだ」 しばらくして、杉村が鼻水をズッとすすった。 何度も何度もすすった。 親指で目頭を押さえて、眉間に皺を寄せている。 杉村は泣いているようだった。 「お前の遺体は俺たちが蜘蛛の糸に(くる)まれてたから下ろしたよ」 「そうか、ワリィな。 あー…何十年も経ってんのか。そしたら母ちゃんも、もう死んでんだろな」 俺は何も答えずに、杉村の背中をポンと軽く叩く。 何も言えない。 「でもよ、俺、ずっとここで彷徨わなくちゃいけないのか?どうすりゃ、いいんだ?」 「俺だって知らねえよ!そもそもどうやって、俺をここへ連れて来れたんだよ?俺も戻りたいんだけど」 杉村は俺をチラリと見ると、下を向いた。 「何度か、キラッと光る時かあったんだ。出口かと思ってその光の中へ突っ込むと、その先に誰かがいたんだ。助けて貰おうと毎回思うけど、蜘蛛がやってきて、咬みつかれて動けなくなって、引きずり戻されちまう。その度に死ぬ程痛いけど、何とかいつも逃げていたんだよ…」 あぁ…それで苦しそうに、いつも壁の中に引き戻されていったのか。 蜘蛛は牙で捕らえた獲物に麻酔し、動けなくなって糸でグルグル巻きにしたあと、消化液で内臓を溶かし、それを啜って食べていると聞いた事があるが、もしかして、いつも嘔吐していた液体は杉村の内臓か? そう考えると、勝手に吐き気がこみ上げた。 本体のミイラになった杉村ではなく、魂になった奴の肉体から何度もエネルギーを吸い取っていたのかも知れない、その蜘蛛は。
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