孤独

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*** 携帯の時計を見た。 杉村が消えてから1分しか経っていない。 だけど…… 実際には、どれくらいこの世界を歩いていたか分からない程歩いた。 元々いた場所さえわからなくなった。 だけど、疲れはない。 杉村が何十年も彷徨っていたのに、数日しか経っていないような感覚。 この1分が一体どのくらいなのか。 「水夜……」 早く見つけてくれ。 光はどこだ。 そんな時だった。 目の前が急に暗くなった。 「な、ん…」 オニキスのような真っ黒の大きく丸いもの。 それが目の前に現れる。 目だ。 2メートルはありそうな大きな蜘蛛が上から糸を出しながら降りてきたのだ。 天井さえ分からない空間のどこからコイツはやって来たんだ。 フワリと俺の前に降りると牙を蠢かしている。 食べられる! ゾッとした。 どう逃げればいいのか分からない。 硬そうな黒い毛がみっちりと生えた足を俺の方に動かす。 「うわ……、うわあっ」 一歩下がり、二歩下がり、そして俺は蜘蛛から逃げるために走り出した。
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