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あまりの痛みに朦朧としてきた。
蜘蛛の麻酔に体も痺れてきている。
……杉村と同じように、俺もここで何十年も……
そう思いながら、俺は意識を手放した。
***
目を開けるとーーー
俺は工場の中を歩いていた。
蜘蛛は?
蜘蛛から逃げられたのか?
だけど、俺が来た時より、埃が少ない。
割れた窓などなく、綺麗に掃除されている雰囲気だ。
なんで、歩いてる……?
もしかして。
また夢を見てるのか?
俺の足は社長室の方に向かっていた。
そして、太い指輪を中指と親指に付けたのを交互にに見つめた。
あれ、この指輪……杉村がつけてなかったか?
これは、杉村の過去か?
杉村は社長室に入ると、人がいないか探し始めた。
が、人は1人もいない。
舌打ちをしながら、机の引き出しを開けたり、棚の本なんかをバサバサ下に落としながら、物色をしている。
その時、不意に棚の奥にもう一つ部屋がある事に気がついた。
例の蜘蛛の飼育部屋だ。
杉村は、その部屋に細身の体をスルリと滑らし奥へ入る。
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