孤独

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やめた方がいいって! 杉村!そこに入ったらヤバい! 過去の話だと理解していたし、だけど俺は叫ぶのをやめられないし、杉村は足を止めない。 ……俺の声が届く事もないんだけど。 そして、ライターの火をつけ、周りを眺めると、蜘蛛が並ぶケースを見て、片眉を上げた。 「気持ち悪りぃ」 杉村が見た時は、社長がいなくなってから日が浅かったせいか、カサカサと蠢く蜘蛛もいた。飼育ケースに各一匹飼いをしているせいか、餌がなくなると、共喰いなどなく、大半は死んでいたようだ。 「おっ…」 金庫を見つけた杉村。 嬉しそうにそれに近づいた。 レバーを引っ張るが……まぁ、開かない。 ガチャガチャと乱暴に引っ張ったり、ダイヤルを適当に回したあと、舌打ちをして、金庫の側面を蹴った。 ……まあ、そんな事をしても金庫が開く事はないんだけど。 第一、ダイヤルが奇跡的に一致したところで、鍵がない。 そのあと、ライターの火で指が熱くなって、1度杉村はライターの火を消した。 暗くなってすぐだった。 バサッとなにか大きなもの物音が聞こえ、杉村が「ギャ!」と悲鳴をあげた。 そのあと、「やめろ!」とか「離せ!」とかドスの効かせた声で叫んでいたが、しばらくするとくぐもった声で「助けてくれ」と聞こえ、しばらくして杉村は動かなくなった。
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