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もう駄目だ。今度こそダメだ。
これは杉村と同じ状態……
そろそろ体だけでなく、顔のあたりも糸で巻かれて始めたし、このまま窒息してしまうのかも知れない。
水夜。
……やっぱ、好きとか言えば良かったかな。
後悔しない人生とか難しいんだな。
不思議な世界が徐々に慣れて来てしまっていたのかも知れない。
糸でグルグルにされながら、俺は何となくそんな風に冷静に考えていた。
そして、目を閉じる。
「見つけたっ!大蜘蛛!」
その声に、俺は目を見開いた。
「み、水夜っ!?」
「緋朝!いるのっ?」
水夜の姿は見えないが、声は聞こえる。
その時、再びグルリと蜘蛛に回転させられ、瞬間、彼女がこっちへ走ってくるのが見えた。
懐中電灯の光が眩しい。
「緋朝っ!緋朝!今、助けるから!」
蜘蛛は俺をその場に置いたまま、カサカサと後ろへ下がり、上へスススと消えていく。
「待ちなさい!逃がさないわよ!」
しかし、その前に蜘蛛の姿は分からなくなってしまった。
水夜は蜘蛛を探す事なく、糸でぐる巻きになっている俺に声をかける。
「緋朝っ!今!助けるから!待ってて」
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