孤独

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「蜘蛛は?」 「蜘蛛を追いかけるより緋朝が先よ!待って、今蜘蛛の巣から下ろすから」 水夜の姿は見えなかったが、ズズズと重い何かを引きずって、こっちへ持って来ている音が聞こえた。 「長テーブルを持って来たわ。今、上に乗って蜘蛛の巣を火で炙るから」 水夜は長いテーブルの上に乗ると、俺の目元にヒョコッと顔を出した。 彼女の顔を間近で見て、ようやく安心する。 チャッカマンで、まず蜘蛛の巣を徐々に炙り、俺をゆっくりと床へおろす。 それから、杉村と同じように、繭のようになった俺を中から出してくれた。 「……ここは?」 「二階の工場よ、あなたと、杉村って人が壁に消えてから、しばらくして、杉村さんの魂が上がっていくのを見たの。 もしかしたら、私たちが杉村さんを巣から降ろしたから、魂も解放されて、次は緋朝が蜘蛛のターゲットになるんじゃないかと思って……別の場所に巣を作ってるんじゃないかって探していたの」 体がまだベタベタと糸がまとわりついていた。 手のひらで腕をゴシゴシと擦る。 「うん、多分、水夜の読みどおりだ。何もない空間で杉村が急に消えた。ありがとう。死ぬかと思った」 「助けると言ったでしょ?」 そう言いながら、水夜は俺の顔をハンカチで拭いてくれた。 「とりあえず、一旦帰りましょう。また詳しく話を聞かせて?」 「あぁ、うん」 水夜は、冷たい自分の指で、俺の前髪をかき分けると同じく冷たくなった唇を、額に触れさせた。 俺たちは、なんとか館へと戻ることが出来た。
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