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「あの話、この緋朝と別の空間で、たて子さん、いいえ、本当はやよいさんと言うの。彼女を本当の意味で救う事が出来たの。その話を買い取らない?」
伊蔵は、目をキョトンとさせた後、ニンマリと笑った。
「分かりました。いつも通り、買取金はお話後で決めさせて頂きます」
「それで結構よ、ありがとう」
俺は、このやり取りに入れず、2人の様子を黙って見ていたが、内心とても驚いていた。
水夜の行動を買い取る?
どう言う事だ?
「とりあえず、お茶を用意するわ。二人でお話でもしておいて?知らない2人でごめんなさいね。すぐに戻るから」
俺たちを置いて水夜がキッチンに行ってしまう。
伊蔵を見ると、向こうも俺を見ていて、ニッコリと笑った。
「あ、えぇっと、伊蔵さんは……」
「伊蔵でいっすよ!それにタメ口でオッケーっす。緋朝さんより年下だと思うし!俺、永遠の17歳っすから!水夜さんみたいな感じっすね、ま、一回死んだみたいな!?」
「あ、俺も緋朝で大丈夫…」
死んだ事軽く言うなぁ……てか、俺も全然動揺しなくなったけど。
「オッケーェッ!緋朝っすね!カッケー名前っすね!緋朝って!」
軽いな。
伊蔵は軽い。
「あ、ありがとう。えっと、じゃ、タメ口で…伊蔵は色んな空間を移動して、品物を売ってるんだよね?」
「あ、そうっす!なんつーか、ネット通販みたいな?」
「ネット通販!?なんだ、近代的な発言だな」
伊蔵は、プッと吹き出し、ゲラゲラ笑い始めた。
「確かに、俺は緋朝さんより昔の人間だけど、色んな空間って、勿論俺は、現在の色んな空間も移動してますからね。スマホの使い方だって知ってるし、流行りの服だって着ますよお。金は給料で万屋が用意してくれます」
伊蔵は、笑いすぎて出た涙を拭きながらそう言った。
「ご、ごめん」
「水夜さんも、勿論緋朝さんの時代のものを把握してるハズです。
でも、彼女はあまり使わないし、そんなに知ろうともしないかなぁ。
あー…でも、さっき言ったネット通販とはちょっと違うか。頼まれれば、なんでもすぐに用意し、代金も貰いますけど、万屋の依頼帳ってのがあるんすけど、その依頼をやって貰うんす。ゲームのさ、あるじゃないすか、クエスト。あんなのをやって貰って解決したら報酬金渡します!みたいなー」
何だか興味深い話ばかりだな。
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