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「緋朝は、どうする?一度自宅へ帰って休みたい?それともここでゆっくりする?」
水夜は、置かれた荷物を片付けながら、俺に聞いた。
……一緒に居たいに決まってるじゃん。
水夜はあんまりそうは思ってないんだろうな。
「ここで、ゆっくりさせてもらおうかな。逆に水夜が1人でゆっくりしたいなら俺邪魔だろうし帰るけど」
冷蔵庫に肉のパックを入れながら、水夜がこっちを見る。
今ちょっと皮肉っぽい言い方だったよな、俺。
俺は水夜から目を逸らした。
「……部屋は沢山あるから、1人でゆっくりしたいなら出来るけど、1人より誰かいる方が楽しいわ。それに緋朝が邪魔な訳ないでしょ」
冷蔵庫の扉を閉めて、俺のそばに来ると俺の頬
を指先で触れる。
そして、ワザと俺の視界へ入ってきて、薄く笑う。
「見た目は私よりも、年上のお兄さんなのに、子供みたいね。よしよし、いい子ね。お風呂にでも入る?私が背中を流してあげましょうか?」
抱きしめたい衝動に駆られ、両手に力が入った。
俺を、子供をあやすように見る大きな目は優しい。
可愛い。
小さい肩を俺の中に仕舞い込んでしまいたい。
「水夜」
「なぁに?」
あぁ、抱きしめたいと言いたい。
なのに、口が動かない。
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