考えごと

10/27

190人が本棚に入れています
本棚に追加
/360ページ
「緋朝は、どうする?一度自宅へ帰って休みたい?それともここでゆっくりする?」 水夜は、置かれた荷物を片付けながら、俺に聞いた。 ……一緒に居たいに決まってるじゃん。 水夜はあんまりそうは思ってないんだろうな。 「ここで、ゆっくりさせてもらおうかな。逆に水夜が1人でゆっくりしたいなら俺邪魔だろうし帰るけど」 冷蔵庫に肉のパックを入れながら、水夜がこっちを見る。 今ちょっと皮肉っぽい言い方だったよな、俺。 俺は水夜から目を逸らした。 「……部屋は沢山あるから、1人でゆっくりしたいなら出来るけど、1人より誰かいる方が楽しいわ。それに緋朝が邪魔な訳ないでしょ」 冷蔵庫の扉を閉めて、俺のそばに来ると俺の頬 を指先で触れる。 そして、ワザと俺の視界へ入ってきて、薄く笑う。 「見た目は私よりも、年上のお兄さんなのに、子供みたいね。よしよし、いい子ね。お風呂にでも入る?私が背中を流してあげましょうか?」 抱きしめたい衝動に駆られ、両手に力が入った。 俺を、子供をあやすように見る大きな目は優しい。 可愛い。 小さい肩を俺の中に仕舞い込んでしまいたい。 「水夜」 「なぁに?」 あぁ、抱きしめたいと言いたい。 なのに、口が動かない。
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加