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どこかに居る。
蜘蛛が。
だけど、どこに?
「緋朝、今日はもう考えるのをやめましょう?
あなた目が赤いわ。
ゆっくり眠るのよ。寝ているようで私たちはあんまり寝ていないわ。
危険があれば困るから、この部屋で一緒に寝ましょう。ね?」
「うん……」
男と女が同じベッドで眠るのに、何も思わないのか水夜は。
ただ、一緒に休むとか、俺を男とは見てないのか?
今回は怖い探検をしに行く訳でもないのにさ。
彼女はお風呂に入ると言って、一旦部屋を出て行った。
俺も風呂に入りたいが……
杉村が石膏男になって風呂場に出てきたことを思い出す。
そうなったら、ちょっとイヤだ、な。
まぁ、もう杉村はいないハズなんだけど。
とにかく、考えるなと言われても、まだ終わったわけじゃないこの件……なにか解決するヒントがあるハズなんだ。
やよいさんの時のように。
やよいさんは、友達が欲しかった。
蜘蛛は?それとも誰かが?
社長か?
蜘蛛をコレクションする社長。
何か、何かヒント。
俺は考えてるうちに、思った以上に疲れていたようで、うつらうつらと眠ってしまったーーー
***
従業員が誰もいない事務所。
あの工場の事務所だ。
俺はそこを歩いていた。
いや、俺が歩いてるハズがない。
また、1人で別の空間へやって来て、誰か目線で何か体験しているのか?
そいつは、奥の社長室に入ると、棚から、あるバインダーを取り出した。
色見本と表紙にマジックで書いてある。
四角く囲われた沢山の色のページをパラパラとめくり、少しずつ違う青が表になっている所を開けた。
指で1つずつ青を辿っていき、ある青で指を止めると、机の上のメモ帳を1枚取り、ボールペンで何か書いている。
ボールペンを持つ指が太短くてゴツい。
男性だと分かる。
もしかして、社長か?
そして、メモに「0062」という数字を書いた。
その男性は、社長の机から何かを探し、折りたたまれた紙を見つけ出すと、広げる。
金庫の説明書だ。
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