考えごと

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そいつはメモと説明書を持って、戸棚の隙間のレバーを使い、例の蜘蛛の部屋に入って行った。 やはり社長のようだ。 ケースに入った蜘蛛たちを、ゆっくりと近づいて1つ1つ見ていく。 この時、ケースの中の蜘蛛たちは生きていた。 長い足をゆっくりと動かし、蠢いている。 ちゃんとした気持ちは分からないが、社長は満足気な気がした。 その後、大きな金庫に近づくと、ダイヤルをカチカチと回す。 しかし、早すぎて、暗証番号は残念ながら、分からなかった。 その後、ジャケットの内ポケットから、大きめの鍵を取り出し、鍵穴にいれて回す。 ……この鍵! やよいさんの家から持ってきた鍵にそっくりだ! まさか、ここの金庫の鍵!? どうして? そのあと、説明書の暗証番号の再設定のページを開き読み始めた。 そして、再設定した番号は、さっきメモした0062。 そして、扉を閉めると部屋を出て行く。 机に金庫の説明書を入れ、それから事務所を出ようとするが、社長は足を止めた。 誰かが近づいてくる音が聞こえるからだ。 社長はこっそりと他の従業員の机の影に隠れ、誰が来たか確かめる。 見た感じ、派手なスーツを着たチンピラ…ヤクザか? とにかくいい奴だとは見た目から思えない。 こんな奴と何か関係が? 金を借りたりしていたのか? それとも、何か危ない取引でも? とにかく、隠れる社長の視界から見て、明らかに怖がっている。 ヤクザに見つからないように、こっそりと蜘蛛の部屋に戻る社長。 音がしないようにゆっくりと。 そして、沢山並ぶ蜘蛛のケースを1つだけ取り出すと、その蜘蛛の入ったケースを金庫に入れた。 そして、今度はすばやく蜘蛛の部屋から出ると、棚の奥が分からないように、そっと閉める。 社長は、廊下を走って逃げた。 だけど、ヤクザに見つかり、サッカーボールのように蹴られ、そして殴られ、最後には口に銃を押し込まれて。 撃たれた。 ドンという衝撃が、まるで自分が撃たれたような気がして、何にもないのに息が苦しくなる。 「う、わぁっ!!」 その苦しさに飛び上がり、起きた。 目の前に、水夜がいる。
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