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「矢田さん、2人で行くよりみんなで行った方が楽しいよ?今度みんなで行こうよ」
は?
は?
俺、何言ってんだ。
この子なら、俺の事好きでいてくれそうじゃん。
矢田さんは、俺から腕を離すとプクッと頬を膨らませた。
「宮本さんたら。でも、諦めませんからねー」
するっと俺の横を通り過ぎて、一度俺を見るとニコッと笑いかけた。
俺もそれにニコリと微笑み返す。
廊下を歩いていく彼女を見送っていると、後ろから低い声が聞こえる。
「矢田さんに誘われてるなんて、良い男だねぇー、宮本く、ん、は!」
振り返ると同僚の飯原。
イヤミったらしく、肘でゴンゴンと俺をつつく。
「飯原も今度いこうぜ、イタリアンだってさ」
「お前らの会話聞こえてたわ。矢田さんてお前のどこがいいの?俺のが大切にしてやるのに。とりあえず誘われたら即、メシ行くわ」
俺は飯原を冷たい目で見てやった。
俺だって水夜の事がなければ、素直にメシ食いに行ってたっちゅーの。
頭では理解しているつもりでも、心の底で水夜を諦められない。
「あのな、宮本。あんな可愛い子なかなか居ないぞー?とりあえず付き合ってみたらいいのに」
「あー…分かってるさ、矢田さんが可愛いのは。でも、俺にも事情があるんだよ」
「なに!?何だ好きな子でもいるワケ?」
飯原は俺の背中に腕を回して、ニヤニヤ笑ってきた。
「好きな子っていうか、なんか、そんなんじゃないんだよなぁ」
「じゃあ、なんだよ。なら矢田さんいっちゃえよ」
飯原の絡みがかなりウザい。
俺を廊下の端に寄せると、俺に壁ドンをし、俺を見上げる。
「……矢田さん、食事のあとも一緒にいたい」
真剣な顔ですっごいカッコつけてくる飯原に、俺は心から拒絶した。
「きっしょ!飯原お前やめろ!」
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