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「あれから体調はどう?無理してない?」
「いや、すごく元気になったよ」
玄関の扉を閉め、俺たちは食堂に向かう。
「お昼ご飯食べる?オムライスなんてどう?それとも、もっとあっさりした物の方がいいかしら?」
こんな事を言ってくれるのも嬉しい。
いや、何しても可愛く見えるのかも知れない。
「オムライスがいい。お腹空いたよ」
「じゃあ、すぐに作るわ」
水夜のオムライスは昔、うちの母親が作ってくれたような、ごく普通のオムライスだった。
チキンライスに、薄焼き卵で巻いたシンプルなオムライスだ。
美味い。
「緋朝はいつも美味しそうに食べてくれるから、作り甲斐があるわ。ありがとう」
向かい側に座った水夜を見ると、俺を嬉しそうに見ていた。
いつもの微笑みより、少しだけ深い笑み。
そして、ゆっくりと瞬きをしてから、自分のオムライスを水夜も食べ始めた。
「ありがとうは、こっちだよ。いつも俺が来たら、こんな美味しい料理を作ってくれてありがとう」
俺の言葉に顔を上げて、再び微笑む。
「1人ぼっちだったんだもの。この暮らしも慣れたし、楽しくない訳じゃないけど、やっぱり誰かとお喋り出来た方が楽しいわ。ご飯を作ってそれを沢山食べてくれるのは本当に嬉しいの、こっちがお礼を言いたいのよ」
うふふと笑いながらオムライスを食べる水夜は、俺を弟か、それとも、もっと小さな子供扱いしているんだろうか?
「もっと俺だから楽しいって言って欲しかったなあ」
ボソリと言った。
いや、心の声が漏れた感じ。
慌てて、そのままオムライスを口に運ぶ。
「緋朝は美味しそうに、いっぱい食べてくれるし、カッコいい男性だと思うし、それに優しい。私の事も守ってくれようとする。
緋朝だから、もっと一緒にいたくなるのよ」
水夜を見た。
逆に彼女がオムライスを食べていて、俺から目線を外している。
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