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「食べたら、工場に行く?俺は心の準備出来てるけど」
「そうね。私もよ。でも、ゆっくり食べましょう。
俺たちは食べ終わると、準備を始めた。
この間用意した物と同じ、懐中電灯とチャッカマン。あと、やよいさんの所から出てきた鍵。
またベッドに2人で寝転がると、俺は目を閉じ、水夜と一緒に例の工場へ旅立った。
***
目を開けると、暗闇。
その闇に目が慣れる前に、懐中電灯をつけた。
工場の廊下。
前に来た時と同じ場所に立っている。
「緋朝、あの蜘蛛の部屋へ行きましょう」
「あぁ、急ごう」
俺と水夜は早歩きで、蜘蛛の部屋へ向かう。
しかし、事務所のドアを開けた時だった。
社長室の方から、あの大きな蜘蛛が現れたのだ。
シャアーッと威嚇の音を出し、机の物をなぎ倒し、俺たちの方へ向かってくる。
「うわっ!」
一旦、事務所の扉を閉めて、俺たちは開かないように全身でそこを押さえる。
向こうから蜘蛛がドアに体当たりをしてきて、俺たちの体にもその振動がビリビリ伝わってきた。
「どうしよう」
「仕方ないわね、私がオトリになるから、緋朝は金庫の鍵をあけるのよ」
水夜が俺に鍵を手渡した。
「えぇ!?逆じゃないか?普通!俺がオトリに……」
「グダグタ言ってるヒマはないわ。行くわよっ!」
水夜は扉を開けると、蜘蛛の動きに合わせ、タイミングよく、ひらりと蜘蛛の上に飛び乗った。
蜘蛛が上に乗った水夜を、振り落とそうと暴れる。
「緋朝!早く!」
俺は無我夢中で社長室まで走った。
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