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ようやく水夜が俺の所にやって来て、蜘蛛の死骸を一緒に探してくれる。
「どんな大きさなの?」
「3センチくらいだっ!」
懐中電灯で照らし、散らばった紙を、横にかき分け辺りを探す。
しかし、なかなか見つからない。
思った以上に遠くに放り出してしまったのか?
焦って探している間に、大蜘蛛が近づいてきた。
「この辺りから霊気を感じる…….あった!あったわ!」
それは、他の散らばったゴミの影にコロリと落ちていた。
そんな所にあったのか。
水夜が蜘蛛の死骸を手のひらに乗せ、すばやく大蜘蛛の前に出る。
「水夜っ!あぶないっ!!」
蜘蛛は金切り声を上げ、まるでシャベルカーのように前脚の1本を、高々と上げた。
水夜は全く怯まない。
手のひらに乗せた蜘蛛の死骸を大蜘蛛に差し出し、避けることもしない。
俺は足を埃で滑らせながら、四つん這いから立ち上がり、水夜の元に駆け寄った。
そして、彼女を守る為に抱きしめる。
俺は必死だった。
抱きしめても、勿論やましい気持ちなんてなくて、ただ、彼女を守りたかった。
ただ、水夜がいう事が正解なら、この大蜘蛛は、金庫の中の蜘蛛が必要なんだ。
大蜘蛛の脚が振り下ろす。
あぁ、もうダメだ!
でも、水夜は守らないと!
ギュッと目を閉じて、彼女の頭を抱えるようにしっかりと抱く。
だけど、水夜は大蜘蛛に手を伸ばすのをやめなかった。
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