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「これは…」
長方形の薄いシルバーの縁、真ん中は透明のプラスチックになっていて、中にサイズに合わせた紙が入っている。
紙は、薄黄色く変色していて、マジックで" 小花 "と書かれていた。
小さい花?なんだ?
「緋朝、お待たせ。あら?なぁに?それ」
「あ、杉村の財布から出てきたものだよ。それより、体調は?」
「今回は大丈夫みたい。緋朝が私のお世話をしてくれたお陰だわ。ありがとう。今回の蜘蛛の事も、緋朝の大活躍ね、すごいわ」
すごくなんかない、怖がってただけだ。
俺は首を左右に振ると、首を竦めた。
水夜は、俺と、向かいにコーヒーを置き、自分も座る。
「なんかさ、蜘蛛は金庫を開くの待ってたんじゃないかと思う、いや、これは俺の勝手な考えだけど」
「そうね、私もそう思うわ。きっとその想いが強くて、あんな大蜘蛛の化け物になったのよ。そうでなければ、自分の死骸を見て、消えたりなんかしないと思う」
「うん、青い綺麗な蜘蛛だったな。よくは見れなかったけど…あっ…」
俺の話を聞きながらコーヒーを飲んでいた水夜が、瞳を俺に移した。
「あっ…て、なに?どうかしたの?」
「金庫の番号は、あの蜘蛛の色の番号だったんだ。多分、あの蜘蛛、青かっただろ?」
水夜は首をコテンと倒すと、どういう意味なのか聞くために俺を見た。
「色の番号…あの社長、色見本って書いた本をめくっていた。青いページだったと思う。あの社長は、あの蜘蛛が1番のお気に入りで、多分希少だっかのかもしれないな?きっと殺しに来たヤクザには見せたくなかったから、金庫に隠して、一時的に逃げた。そして、落ち着いたら扉を開けて、出してやる予定だったんだ、きっと。だけど、社長は死んだ」
「……あの青い蜘蛛、持って帰ったら良かったわ…館の裏に埋めたのに。かわいそうにね」
「そうだな……あ、杉村の財布、埋めてやったらどうかな?」
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