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杉村が消えて行く前に、自分が死んだ事、自分の母親が死んでいるであろう事を思い、泣いていたのを思い出す。
俺は頭をクシャクシャと掻いた。
俺は立ち上がると、水夜の所へ向かう。
キッチンで、入れ物を探している彼女の後ろから声をかけた。
「水夜、ごめん。なんか、酷い言い方した」
俺を1度チラリと見たけれど、再び背を向ける。
「……私じゃなくて、杉村さんに失礼な事を言ったと思う」
「あー…だよな。アイツ、最後泣いてたの思い出してさ、ホント俺、嫌な言い方したなって思った。……水夜にも、悪いなって。ごめん…反省してる」
水夜は、手を止めて俺を見た。
しばらく俺を見つめていたけれど、フッと微笑む。
そして、俺の近くへやって来た。
「また、小さい子供みたいな顔する。
フフフ、優しい緋朝が好きよ、これからは気をつけてね」
まるで、自分の子供に言い聞かせるように、俺の前髪を撫でた。
「一緒に、いい大きさの入れ物を探してくれる?そこの戸棚に、空の缶が入ってるはずなの。私はこっちを見るから、そっちを見て欲しいの」
何だよ、そんな笑顔1つで、俺を安心させるなよ。ずりぃわ。
「なぁに?何で泣きそうな顔するの?ごめんね?私も強く言い過ぎたかしら?そんな顔しないで?ね?ひ、と、も、君」
明日から、また離れ離れなのに、なんで余計に心を切なくさせるのか。
単に俺が余裕がないだけなのか?
「水夜」
「ん?」
「俺さ、俺…」
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