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それでも、中へは入れてくれた。
先週は普通に別れたハズだろ?
「どうしたの、なんか機嫌悪い?」
「いいえ、何にもないわ」
そんなハズはない。
明らかにいつもとは違う。
むしろ、初めて会った時よりも、声に愛想がない。
「何もないハズないだろ?何かいつもと違う」
「ないわよ。さぁ、なにか食べる?もうお昼だわ」
確実にいつもの言い方と違う。
キッチンへ行こうとする水夜の腕を捕まえると、俺の方へ体を向ける。
だけど、彼女は俺から顔を逸らした。
「水夜、俺、何かした?」
「だから、何もしてないわ。何もね。離して」
何だ、その言い方は。
逆に何もしなかった事がダメだったのか?
何をすれば良かった?
分からない。
「水夜、俺、何がダメだった?」
「ダメな事なんてないわ、気にしないで。でも、今日はお昼を食べて、杉村さんのお財布を埋めたら、自宅へ戻って。たまには自宅でゆっくりしたらいいわ。だから、離して」
俺を心配しているのか、怒っているのか、何なのか分からない。
だけど、俺は水夜の腕を離す。
「昼食を用意するわ。昨日の残り物の和食でいいかしら?」
「手伝うよ、どれを運べばいい?」
俺もキッチンに入ったけれど、仏頂面をしたままの水夜に押し返される。
「手伝う程の事はないから、座ってくれていて大丈夫よ」
……ホントにどうしたんだ、水夜は。
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