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「いいから、手伝うよ、食器沢山あるんじゃないの?」
俺がキッチンにおし入ると、冷蔵庫から今出したと思われるラップでフタされたボウルやお皿が数個と、重ねられた食器が置いてある。
ラップの中身をみると、美味しそうな料理が入っている。
「……これ、昨日の残りって言ったけど、もしかして、誰か昨日来てたの?こんなに沢山」
「……来ないわよ。だーれも来ないわよ」
食器だって、一人前の数じゃない。
「……もしかして、俺の分だった、とか。そんなわけないか」
「……。」
ぷいとそっぽを向いて、料理を温め直そうとする水夜を俺は止めた。
「ちょっと待って、ホントに俺の為に作ってくれてたの!?」
「……そうよ、いつも金曜の夜にやってくるから、今度もそうかと思って、金曜も土曜も食事を作って、待っていたの。何度も料理を捨てたわ。どいてちょうだい、運ぶから!」
いつもとは違い、荒い行動で食事の用意をする彼女。
水夜の後ろを俺は右に左に動き、言い訳をした。
「ごめん、仕事でさ、夜遅くまでこの1週間働き詰めで、昨日まで仕事だったんだよ」
「いいのよ、分かってる。勝手に来ると思ってしまった私が悪いんだから」
彼女は食堂へ行き、テーブルに料理を置くと、またキッチンへ戻っていく。
その後ろを俺が追いかける。
「なんだよ、そう言いながら怒ってんじゃん」
「怒ってなんかないわ」
「怒ってるよ!連絡も出来ないし、こっちに来る余裕もなかったんだよ」
「緋朝に怒ってない!自分に怒ってるのよ!」
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