たて子さん

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*** 自宅とは違う、埃臭いような、カビ臭いような臭いで目を覚ました。 寝ぼけた目をうっすら開けると、俺は寝ていたハズなのに、立っている。 ハッと完全に目が覚めた。 俺は知らない家の玄関に立っている。 " な… " なんだ、と声を出したかったのに出ない。 そして、勝手にゆっくりと足が動き出した。 足の感じからして靴を履いている。 靴を脱がずに家の中に入った様だけど…… ギシギシと鳴る廊下を歩き、そして、部屋の中に入る。 視界が右、左と動き、リビングとキッチンが見える。 だけど…… 感覚はあるのに、勝手に体が動いている。 なんだ、これ。 俺はどこに来たんだ。 勝手に歩いていく足はリビング……というか、茶の間と言うべきか、広めの和室に入っていく。奥にはキッチン。ひと昔前の流しや、それから冷蔵庫。 人が住んでいる気配がなく、埃や、蜘蛛の巣が酷い。 気味が悪い。 廃屋に肝試しに来たような気分だ。 肝試し……? もしかして、これ、あの、水夜の日記の家じゃないだろうな? トイレやバスルームを見る。 どちらも黒い水が溜まり、顔をしかめたいけど、勝手に体はその水を覗き込んでいた。 そして、しばらくすると、2階へ。 待て。 もし、水夜の日記の" お化け屋敷 " なら2階に、変なヤツがいたよな。 嫌だ!嫌だ! と、思っても体は2階へ上がって行く。
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