仲良し

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「さ、私の心配なら大丈夫よ。もう一杯お茶でも飲む?」 でも、本当に水夜を放っておいて大丈夫なんだろうか? もし、何かあってケガでもしたら… 水夜を見下ろすと、俺が見つめている事に気がつき、大きな目を細めて、小さく微笑む。 俺に心配かけまいとして、笑顔を向ける彼女に、俺の心臓がキュッと痛んだ。 「水夜。」 彼女の頬に手を伸ばして。ゆっくり触れてみる。 その手を水夜が、ギュッと握った。 「水夜?」 「緋朝は、私を、わがままな女にしたいの?」 「ん?」 「私は、緋朝に頼らずに生きていきたいのに」 ギュッと俺を握った指先が、細く柔らかくて。 強くて何事にも動じないような、水夜が小さく、弱く、儚く感じる。 「俺を、頼ってもいいのに」 水夜の黒い瞳が、薄暗いシャンデリアの光に揺れ、捨てられた子猫が、強がっているような、そんな表情を見せるから。 また、忘れかけた感情が、チョロチョロと顔を出してくる。
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