仲良し

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「俺が出来る事は、やるから。そしたら、水夜もちょっとはラクだろ?」 「……そうやって、私を甘やかすから」 俺から視線を外し、彼女は下を見る。 「私は特別なんじゃないかって思ってしまうの」 「水夜は特別だよ」 本当だ。恋愛感情がなくても。……いやあっても。 彼女は色な意味で特別なんだ。 「……特別…なの?」 彼女は、俺から手を離すと、逆に俺の頬に触れた。 彼女の指先は、冷たくて、でも柔らかい。 「私が、死人なのに、特別と思ってくれるの?こんな、私を?」 「水夜は、強いのに、たまに弱くなるんだね」 俺が笑うと、彼女は眉をひそめて、泣きそうな顔になり、俺に抱きついた。 「だって、私。このまま生き続けるのに死人だもの。お母さん、そのまま死なせてくれれば良かったのに。人を愛する事もできないなんて」 彼女の小さな肩が震えていた。 抱きついた華奢な体が、俺を切なくさせる。 「大丈夫だよ。大丈夫…」 「緋朝…もし、緋朝の住む世界で、誰かと結婚しても…私を忘れないで」 抱きついたまま、顔を上げる水夜の顔を見ると、瞳に沢山の涙が溜まっている。 今にも溢れそうなくらいに。 「嫌だよ、俺は、水夜が好きだ」 ……言ってしまった。 とうとう。
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