たて子さん

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階段を登りきると、左に部屋が1つ。右に部屋が2つ。 俺の体は左に曲がり、その部屋に入る。 何もない和室。 家具もない。 うぅ、やはり、書いてあったあの部屋なのかも知れない。 俺の足は押入れに向かう。 やめてくれ。 押入れの前に来ると勝手に俺の右手が襖を開けた。 上の段の中を左右覗き込み、腰を曲げて下の段に顔を入れる。 奥に いた。 " っーーーーーっ!!" 声にならない声で、俺は叫んでいた。 足を抱えて座っているそいつは、日記に書いてあった通り、両方の目が縦方向についていて、こっちを見つめている。 そして、不自然に塗られた口紅の口がニタリと笑った。 この後、口が開いたら、襖が勢いよく閉まるはずだ。 すばやく後ろに体を引かないと! と思うけど、体は言うことを聞かない。 動け! 動け! でも、俺の体は動かない。 だけど、何故か襖も閉まらない。 その間、女はこっちを見つめながら、更にニタァと口を大きく開けて笑った。唇についていたツバが糸を引いているのまで見えた。 そして、女がゆっくりと、そのまま四つん這いになり、こっちへ来ようと動き出す。 ヤバい、マジでヤバい! 来るな!来るな!!! 俺は動かない体を何とか動かそうと、力を入れる。 その間にも女はペタ、ペタとゆっくりと亀のように近付いてきた。 「あああぁあぁああぁぁあ……」 変な声を出しながら、俺の顔を女が覗き込む。 目が縦に瞬きし、不揃いな歯が見えた。 もう終わりだ。 こいつに殺される…!
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