化け物日記帳

街に住む野獣

山や森があるような、自然の多い場所で、噂になるような、大きな獣が出るのなら分かるけれど…こんな街中で引っ掻かかれる？
カマイタチのような物？
その怪我をしてしまうという場所にも行ってみたが、大きな獣が出そうな場所だとは思えなかった。
昔ながらの古い長屋が数軒並び、その前には狭い空き地。
近所で飼われている犬が、何故かやたらと吠えているので、誰か出てくると、厄介なので、その長屋の近くには寄らなかった。
明日、もう一度行ってみようと思う。

8月22日（木）

雨が朝からシトシト降っていた今日。止む様子もなかったから、日付が変わる前に長屋へ行ってみる。
今日は、昨晩の犬が吠えていないので、こっそり長屋の前の空き地に入ってみた。
私が空き地へ入ると、大きめの砂利を踏んでいまい、ジャリッと音を鳴らしてしまった。
二歩目は、もっと慎重に歩いた。
砂利の間から短い雑草があちこちに生えていて、手入れされていない。
長屋は3軒連なっていて、全て空き家のようだった。それが分かり、慎重に歩くのをやめた。
昨日、遠目から見たときは誰か住んでいる気がしたのに。
錆びて傷んだ物干し竿が、両端二軒の前だけ置かれている。
明日もう一度来てみよう。

水夜は俺に「ここまで読めた？」とその日の日記の終わりを指を指して、聞いてきた。
丁度、読み終えた所だったので、「うん」と言いながら頷く。

「実は、次の日、その獣に襲われて、首からお腹にかけて引っ掻かれたの。まるで、熊のような大きな爪痕だった。私は、とっさにその獣を食べたのだけれど、私は1ヶ月ほど動けなくなったわ」