街に住む野獣

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少年は何も言わなかった。 ただ、窓のそこに立っている。 俺は緊張した手で、自分のスマホを静かに取ると、懐中電灯のモードにし、それを彼の方に、そっと向けた。 少年の全部がハッキリと映った。 力ない目が、俺たちを見つめている。 顔面は血で染まり、鼻と口の周りは、それが黒く固まっていて、血液で酷く流れていた事が分かる。 首は、半分以上真ん中辺りまで切れていて、今にもそこから千切れて下に落ちそうだった。 同じように黒々としたタールのような血液が、首の周りで固まり、首が揺れるたびに、グズグズと肉が揺れる。 長く伸びている右手は、首と同じく、肩を深く切られていて、腕が下に落ちそうになっている。 「酷い状態だわ。一体この子に何が。 ねぇ、君…どこから、来たの?」 水夜は、冷静にその少年に声をかけ、近づこうとゆっくりベッドを出た。 俺は、ライトで明るくするので、精一杯だ。 スマホを力いっぱい握っているのに、汗ばんで滑りそうになる。 「ねえ、私たちに何をして欲しいの?」 彼女がそう言いながら、立ち上がった時だ。 少年の口が大きくガパッ開いた。 ベタベタした血を大量に吐いた。 「グボァ…」 「うぁ!」 思わず俺は声を出す。
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