街に住む野獣

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「おぉおがあ…」 叫ぶ声は、うがいするように、ゴボゴボと泡を立てて、そのまま吐き出された。 口が今にも下顎から外れそうなほど、大きく開いて赤黒い血が、ドバドバと滝のように垂れ流れている。 「かわいそうね、どうしたの?おうち、帰りたいの?」 水夜は、優しい声で少年に語りかける。 立ち上がって、彼に近づくために、そっと一歩を踏み出す。 「お、おい、みや…」 危険じゃないのか?大丈夫なのか? 相手は子供でも、霊なんだ。 水夜は俺を振り返る事もなく、少しずつ足を進める。 「ねぇ、名前は何かしら?おうち、一緒に探してあげようか?」 「おおぉ、ががあぁ……」 水夜が、ゆっくりと一歩ずつ近づき、俺も水夜の後ろから、携帯で彼を照らす。 見れば見るほど、怖かった。 少年の細い左腕の、膝の関節が、曲がらない方向に折れ曲がり、腫れ上がっていた。 突き破って折れた骨が見えている。 目をそらしたくなる酷い状態の、この少年は、本当に何で、ここへ来たのか。 血と土でドロドロに汚れたTシャツには、昔のアニメがプリントされている。
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