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足の裏に付いた髪の毛の塊を、指の先でソッと取ると、ゴミ箱に捨てる。
俺は冷蔵庫の水をゴクゴクと一気に飲んでから、あの黒い日記帳を見つめた。
俺は水夜が別の部屋に行った話を読んでしまった。
もしかすると、眠ればまたあの女の夢を見てしまうのかも知れない。
「水夜のやつ、余計な日記を」
水夜が、フフフと微笑んでいるのを想像した。
くっそ……!
俺は結局朝まで眠らずに起きていた。
会社の帰りに、水夜に会いに行かなければ。
***
会社の帰り。
俺は黒い日記を片手に、例の道の前に立つ。
日記を持っているからか、勝手に路地が開けていた。
路地を通り、洋館の扉に手をかける。
勢いよく開けようとした時、先に水夜が中から扉を開けた。
「もう。せめて扉をノックしたらどうなの?」
「水夜、どういう事なんだよ、あの日記は」
「……まぁ、入って?今日はアイスコーヒーでも如何?」
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