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目を開けると、俺は木と薄い霧に囲まれていた。
暗いが、何とか木々の間の月明かりで目が慣れてくると分かる。
…あの、山に来たんだ。
隣を見ると、水夜もいる。
「水夜」
「地図の山よ。あの子、いるかしら?……山だからか、霊が沢山いるわ、特定の霊気を探しにくい」
俺たちは、懐中電灯をつけた。
水夜は辺りを見渡している。
俺は、ぼんやりと霧の中にうっすらと青白いフワフワしたものが視える気がしないでもないけれど、霧の濃淡だと言われれば、それだけだ。
水夜のようにハッキリは分からない…。
「とりあえず、少し動いてみるか?」
「えぇ。ちょっと待って」
スカートのポケットから何かを出してくる。
「水夜、それは?」
「緑霊香よ、向こうから集まってもらうために、巻きながら歩くわ。さ。行きましょう」
撒いたところに霧が集まってきている…ように見える。
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