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「アイスコーヒーなんか要らないから、説明してくれよ」
俺は屋敷の中に入りながら、彼女を責め立てた。
「あの日記は、読むとその夢を見るとか、そう言うヤツなのか?なあ!」
俺はいつも案内されるソファに勝手に座ると、水夜を見上げた。
彼女は俺の顔を、いつもの様に無表情に見つめている。
そして、そして小首を傾げた。
「……落ち着いて。
やっぱりアイスコーヒーでも飲んでゆっくりしたら?」
……そんな感じで冷静に言われて、俺よりも年上なのに、年下のか弱い美人を虐めているような気持ちになって、思わず目をそらしてしまう。
「ん、……と。分かった。」
「ちょっと待ってて、作りたてがあるの。すぐに持ってくるわね」
そして、水夜は黒のワンピースを翻して、キッチンへ歩いて行ってしまった。
俺はソファの背もたれにドッカリと倒れると、ふぅーとため息をつく。
どうも水夜のゆるいペースに流されてしまう。
……つい、見た目のあの可愛さに許してしまう自分がいる。
情けないな、俺。
でも、どストライクなんだもん、水夜の顔は。
………年が離れすぎていなければ。
問題は、そう。
彼女がおばあちゃんだ、という事だ。
「お待たせ。このアイスコーヒーは美味しい自信があるの。それから、今日はチョコブラウニーを焼いてみたのよ。どうぞ召し上がれ」
おばあちゃんなのに……俺の前にアイスコーヒーのグラスを出す手は、シワシワなんかじゃなく、細くて白い若者の手だ。
見上げると濃くて長い睫毛が、大きな目を縁取っていて、ホントに綺麗で可愛くて、思わず見惚れるほどだ。
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