小さな約束、大きな約束

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*** 気がつくと、俺はあの長屋の前の空き地にいた。 目線が低い…… そして、手には青いボール。 それを、高く放りあげたり、地面についたりして遊んでいる。 そのボールを見ているのは俺なのだけれど、遊んでいる意識は俺にはない。 ……もしかして、子供……?あの少年の目線か? 例の少年と思われる俺は、ボールを高く投げて、キャッチしようとする。 でも、目測を誤り、ボールは目の前に落ちて、長屋の前に跳ねて行き、真ん中の家の玄関の前まで転がった。 その子供はは、それを走って取りに行く。 ボールを拾い、振り返った時だった。 1匹の小さな子猫が、少年の方に歩いてくる。 「あ!また来てくれたの?」 やはり、少年の声だ。あの死体の声とは違うけれど、小さな男の子だは分かる。 彼はボールを置き、猫の方へそっと近づくと、座り込んだ。 白くて、青い目の小さな子猫が、少年が差し出した手の甲に、自分の頭を擦り付け「にゃあん」と鳴いた。 「まだ、お母さんは見つからないの?よしよし、かわいそうだね」 少年の言葉を聞く限り、この子猫は野良猫だ。 よく見ると、白い体は汚れていて、ガリガリだ。 「おいで」 子猫は、少年に素直に抱かれ、そして首元に、再び頭を擦り付けた。
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