小さな約束、大きな約束

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三軒あるうちの真ん中の玄関を開ける。 磨りガラスがはめられた引き戸が、ガラガラ音を立てた。 子猫を抱いたまま、玄関に入ると、すぐに狭いダイニングキッチンがある。 奥に一部屋。物はそんなに置かれていない。 見るからに古い家具ばかりだったけれど、きちんと片付けられている。 2ドアの冷蔵庫を開けると、食品はほとんど入っていなかった。 牛乳と、マヨネーズ、それから卵が2つ… 少年は牛乳を取り出すと、小皿に少しだけ注いだ。 子猫は、皿に顔を近づけ、フンフンと匂いを嗅ぐと、牛乳を飲み始めた。 「美味しい?」 子猫は牛乳を無心に飲んで、小皿をペロペロと舐めているのを、少年はずっと眺めていた。 *** しばらくすると、視界が波打つように、ぼやけてくる。 子猫がだんだんと見えなくなり、波紋が広がるわうに映像が変わる。 ーーー少年は走っていた。 勿論、俺は知らない道だ。
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