小さな約束、大きな約束

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息を切らして、角を曲がると、長屋が目の前に見える。 この子は、一気に扉を開け、駆け込んだ。 「ただいま!シャオファ!」 シャオファ?猫のことか? 玄関で靴を脱ぐ少年の元に、奥の部屋から子猫が走ってきた。 甘えた声を出し、擦り寄っている。 「あのねぇ、今日お休みの子がいたからねぇ、給食でパンの余りが出たんだ。でね、僕、ジャンケンで勝って、パン貰えたんだ!シャオファのオヤツにしよう」 ランドセルの側面につけてある巾着からコッペパンを取り出し、一口より、更に小さいサイズでちぎってシャオファの前に差し出す。 チャクチャクと咀嚼して、おかわりを要求して鳴くシャオファに、少年は再びパンをちぎって口元へ持っていく。 「ねぇ、シャオファ。何で、お前の名前をシャオファにしたと思う?お母さんがね、昔、台湾に住んでた事があるんだ。そこで飼っていた猫が、シャオファって言う名前だったんだって。可愛いだろ?」
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