小さな約束、大きな約束

13/36
前へ
/360ページ
次へ
「おじさん、だれ…?」 宏則は、持っていた鉛筆をぽろりと落とした。 体に緊張が走るのを感じる。 俺が直接見えなくても、宏則の顔が強張っているのもわかる。 シャオファは、急に入ってきた男に驚き、一瞬奥に逃げたけれど、宏則の横にするりと戻ってきた。 「おじさんはねえ、お母さんの恋人だよぉ、君のお父さんになるんだ。お母さんに聞いてない?」 「……聞いてない、お母さん、死んだお父さんが好きって言ってた……」 ヨレヨレのキャメルのジャケットを羽織った見た目50代の男は、かすれて色が薄くなった皮靴を玄関で脱いだ。 ニヤニヤしているのが気持ち悪い。 宏則はテーブルから後ずさる。 「なぁ、宏則くんていうんだろ?おじさんさー、宏則くんのお母さんに恋しちゃったんだよね。あ、勿論お母さんも僕の事が好きなんだよ?」 「お母さんが?」 騙されるな、宏則! 絶対、宏則のお母さんは、こいつの事を好きじゃない。 ストーカーだ! 俺は心の中で叫んだ。
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加