小さな約束、大きな約束

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「お母さん…お仕事行ったよ…」 宏則は、ずるずると尻餅のまま後ろに下がる。 宏則の異変に、シャオファが、男にシャアッと威嚇した。 「宏則くんが居なかったら。お母さん、俺と結婚してくれると思うんだ」 一歩一歩近づいてくる男に、血の気が引き、耳の奥でドクドクと心臓の音がうるさく聞こえる。 「お母さん…」 「そう、君のお母さん、綺麗だよね。毎日店に通っているけど……宏則くんが居るから、俺と結婚してくれないんだよ」 男は宏則に手を伸ばし、シャツの首元を掴み、引っ張った。 勢いで宏則は立ち上がる。 「うぅっ!」 そのまま、首を絞められ、上に持ち上げられた。 「おがぁ、さん…!」 そして、宏則を叩きつけるように床に押し付ける。 ダンッと大きな音がして、シャオファは宏則の横で毛を膨らませ、大きく威嚇した。 そして、四つん這いになっている男のふくらはぎに力一杯噛みついた。 男が顔を歪め、宏則の首を締める手が緩む。 「こっ…の!クソネコがっ!!」 男は、噛み付いて離さないシャオファの背中を鷲掴みにして、思い切り壁に投げつけた。 壁に打ち付けられたシャオファは、ぎゃっと潰れるような声を出し、床にボロリと落ちて、動かなくなった。 「シャオ……フ」
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