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「お母さんの事、幸せにするからね」
首にグゥッと力を込められて、苦しくなる。
ヒヒヒと笑う男の唇の端から、よだれが垂れた。
宏則は、動かなくなったシャオファにゆっくりと視線を移す。
ーーー僕を守ろうとしてくれた。やっぱりシャオファは剣獅子だ。
宏則の、そんな想いが俺の中に流れ込んでくる。
だんだんと、白くなっていき、シャオファが見えなくなる。
そして、視界が途切れた。
宏則は、こうして殺されたんだ…
***
場所は山の中に視界が変わる。
月明かりと、手には懐中電灯を持っている。
ザッザッと枯れ葉の中を歩く音。
俺は歩いていた。
宏則とは違う。
視線が高い。
丈夫そうな大きな袋を担いでいる。
中身が重いのか、ハッハッと息が荒い。
「…重いな」
……声があいつだ。と言うことは今、俺はあの男なのか…?
そして、水夜と俺がいるあの山だと思った。
池の近くを歩いているのが見えたからだ。
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