小さな約束、大きな約束

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人が通らない、道ではない山道。 少し坂になっていて歩きづらいようだ。 そして、その下を見れば池がある。 池のそばのから大きな木の根が盛り上がり、それがイヤに気持ち悪かった。 男は、急に歩くのをやめる… 木の影に、シャベルが置いてあった。 大きな袋をドサっと放り、そのシャベルを手に取る。 どうやら元々ここを掘ろうと思っていたのか、穴が途中まで掘ってあった。 大きな穴と、大きな袋。 ……袋の中身は、もしかして、宏則……? ゾッとした。 この男、まるでモノのように、あの袋を放った。 あのなかに… 宏則は勿論知らない子だ。 でも、母親と子猫を大切にする良い子だった。 それなのに… 俺がそう思っていても、男は穴を掘るのを続けている。 しばらくすると、大きな穴が掘れた。 男は、ふぅと大きくため息をついて、シャベルを置く。 そして、袋に近づいた。 大きな袋の真ん中には、ファスナーが付いていて、それをジジジと、ゆっくり開ける。 中に、薄く目を開け、白くなった宏則の顔が見えた。 俺は目を覆いたくなるが、男は動かない宏則を見て、ヒヒヒと笑う。 男は、穴の中に、ゴミを捨てるかのように、宏則を放り込んだ。 が、あと少し入らない。 男は舌打ちすると、ウエストポーチから小さなナイフを取り出した。 そして、宏則の首に刃を当てる。 やめてくれ!! 俺は力一杯叫んでいたが、聞こえるワケもない。 ナイフを首に差し込むと、スーパーで買ってきた肉を切るように、刃を滑らせた。 俺は泣きたくなったが、容赦なく、男から見る、宏則の首を切る映像が目に入る。 小さなナイフでは、一気に切れなくて、何度も何度も、刃を押し、引いている。 宏則の首がグラグラと揺れ、最後に横にゴキ、と曲がり、穴の中に落ちた。
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