小さな約束、大きな約束

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*** あんなに浅く死体を埋めたのに、野性の動物が掘り返す事もなく、数ヶ月が過ぎた。 男は何度か、宏則を埋めた場所に訪れて地面を踏み固め、新しい落ち葉で宏則が眠る場所にかける事を繰り返していた。 母親の美和子さんは、行方不明になった宏則を探し続けている。 彼女は、心労で痩せ細り、目は虚ろ。 若く、キラキラと可愛らしい美貌は、そこになかった。 そんな時に、宏則を殺したこの男は、と言うと、美和子さんを慰め、なんとか心の隙間に入ろうとしていた。 だが、美和子さんは、息子が行方不明になっているのに、恋愛する気も勿論無く、と言うより、この男にそんな気持ちにもならないようで、元気のない顔で、なんとか愛想笑いをする。 男は、それをイライラしながら、見守っていたようだが…… そして、美和子さんは、宏則を想うあまり、独り、あの長屋で亡くなった。 その手には、宏則の写真が握られていた。 そして、更に数ヶ月して、男は何者かに殺された。 男を殺した犯人はいつまで経っても見つからない。 結局迷宮入りした事件になった。 でも。 俺は、その犯人が何者かを、男の視界から知ってしまった。 ライオンになった、シャオファ。 俺には見えなかった白いライオンが、その時には俺にも見えた。 シャオファが男に襲いかかり、大きく鋭い爪が、男の体に食い込んだ。 服ごと肉をえぐられ、男は訳の分からない叫び声をあげ、その場でゴロゴロと転がり呻いた。 しかし、シャオファは、それを許さない。 前足で男を押さえつけると、首に噛みつき、喉を引きちぎった。 男は自宅で苦しみながら、死んだ。
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