小さな約束、大きな約束

19/36
前へ
/360ページ
次へ
次に視界に入ってきたのは、月だった。 そして、冷たい。 俺は水に浮かんでいる? それに気がついた途端に、水を飲みそうになる。 「っぷ!」 一種溺れそうになったが、最中で足をかいて立ち泳ぎをする。 落ち着いて見渡すと、多分あの山の下にあった、池のようだった。 自分の手を見る。 そして、感覚がある事を理解する。 誰でもない。俺だ。 もしかして、戻ってきた? 1番近くの岸を目指して、俺は平泳ぎをする。 この池、結構深い。 何がいるか分からないどこまでも黒い水の中を泳ぐのは怖い。 それに、……水夜を探さなくては。 何とか岸に辿り着き、上を見上げると崖になっていて、上れるような感じではない。 山に上れる場所を探さないと。 水で重くなった服を、ギュッと絞り、それから大きな声で「水夜ぁー!」と叫んでみる。 山は静かで、近くに入れば聞こえるハズ。 遠ければ、難しだろうけれど。 「み、やーぁ!!」 もう一度叫んでみる。 辺りは、何か大きな鳥がいるのが、ギャーッギャーッと気持ち悪い鳴き声が聞こえた。 だけど、水夜の声はしない。 とにかく ……泥の中に引きずりこまれたのは、宏則が俺に事件の事を知らせる為だったのか?
/360ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加