小さな約束、大きな約束

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木の根を段にして、上に登れないだろうか? やってみるか。 太い根に足を乗せて、ゆっくり体重をかけてみる。 ミシ、とは鳴ったものの、俺の体重を支えるだけの硬さはありそうだ。 何年、何十年と形を変えず、張り出した根。 俺を助けてくれよ、と思いつつ、ツタのようになった崖から出ている根を掴み、慎重に上る。 石や根を確かめながら握り、まるでロッククライミングのようだ。 指が痺れる。足の筋肉が震える。 それでも、何とか山の崖のてっぺんを右手が掴んだ。 もう少しだ! 「緋朝っ!!」 上から声が聞こえた。 そして、てっぺんを掴んだ右手首を細い手が掴む。 「水夜っ!」 「頑張って!登って!」 会えた!良かった! …泣きそうな彼女の顔を、笑顔に変えたい。 俺は全身の筋肉に集中し、上を目指した。 左手もガッシリと崖の上を掴む。 飛び上がり、足をかけて、上りきった。 「緋朝、良かった!大丈夫?」 肩で息をする俺の横で、ホッと水夜はため息をついた。 「俺は大丈夫。それより、……宏則は…ここだ」 俺は、座り込んだ地面の横を指差した。
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