小さな約束、大きな約束

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「宏則?あの、男の子の事?」 「あぁ」 見た目には何も分からない山の地面。 でも、場所はここなんだ。 「緋朝、とりあえず一旦帰りましょう。ビショビショだし、かなり疲れて顔をしているわ」 水夜は、俺の額に唇をつけると、一瞬で、俺は館のベッドで目を覚ました。 隣で眠っていた水夜は、目を覚ますなり、飛び起きた。 「緋朝っ」 「大丈夫、大丈夫だけど、ちょっと待って…記憶を整理する」 「冷たいお茶を持ってくるわ!」 珍しく水夜が俊敏に動いている。 そんなに心配しなくても大丈夫なのに…。 とりあえずびしょびしょドロドロだから着替えなくちゃな。 俺はとりあえず風呂に入らせてもらい、ガシガシと頭を拭いた。 水夜は、ベッドの汚れたシーツを変えている。 泥に飲まれて、あんな映像を見て、泳いで、這い上がって……思った以上に俺は疲れていて、宏則や、あの男の視界から見たモノを整理するのに時間がかかった。 水夜がもってきてくれたお茶を飲んで、少し落ち着くけれど、ため息が止まらない。 「緋朝、大丈夫?」 「あぁ、うん、大丈夫。ちょっと待って、ごめん」 頭がクラクラする。 時計を見ると夜中の1:30だ。 すごく長い時間、あの世界にいたようなのに、こっちではそんなに時間は経っていない。
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