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着替えてから。食堂に行くと、「自分の部屋で休んでてくれてもいいのに」と眉を八の字にされた。
「大丈夫」と、言ったけれど体は重い。
それは水夜だって同じハズだ。
食堂で水夜が運んで来てくれたのは、おにぎり2つと、厚焼き卵とほうれん草のお浸し。それに、かぼちゃの味噌汁だった。
熱くて、ほくほくするかぼちゃの味噌汁は、疲れている体に染み込んだ。
「あぁ、うまい」
「良かった。
それにしても、昨日、緋朝がいなくなったあと、ほんと心配して探したのよ。」
俺の湯呑みに日本茶を注いでくれて、自分の湯呑みにもお茶をいれる。
「逆にどうやって探せた?」
俺が食べながら聞くと、水夜は、俺の向かい側の椅子に座る。
「緋朝の薄くなった霊気を辿るしか無かったの。なかなかそれが大変で、見えなくなったり消えそうになったりとか。そんなすぐには見つからなかったのよ。
でも、真剣にさがしたのよ?」
「分かってる。心細かったし、有り難いと思ってるよ」
水夜を見ると、相変わらず白い肌に、漆黒の瞳と長い髪の毛が映えて美しい。
長いまつ毛が縁取った目を細め、俺に微笑む彼女は、まるで蜜のように甘い。
若い男が、ようするに俺が、手を出していないなんて、奇跡すぎる。が、何ともはや、心身ともに疲れ切って俺はなんの役にも立たない上に、この美しくて、何俺のやましい気持ちをも知らなさそうな小さな彼女を汚してしまうのではという、変な不安まである。
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