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「えぇ、話すわ。
でも、先に聞かせてくれる?アイスコーヒーどう?緋朝が来ると思ったから、朝から水出しコーヒーを作っておいたのよ。」
「あ、……あぁ、美味しいよ。すごく飲みやすい」
「でしょう?浅煎りのスッキリした味のコーヒーを選んだの」
くっそ……
水夜に腹をたてていたハズなのに、珍しく目をキラキラさせて俺を見る彼女を、喜ばせたいと思ってしまう。
「ホントに美味い。
……こっちのチョコケーキも手作りなんだろ?」
「チョコブラウニーよ。久しぶりに作ってみたの」
小さく正方形に切り分けてあるチョコブラウニーを、俺はフォークで刺し、一口で食べる。
うん、美味い。
「サクッとしてるのに、中はしっとりしてて美味いね。ナッツが香ばしいし、いいじゃん、これ」
そう言うと、水夜は目を細めて微笑んだ。
「ありがとう、頑張った甲斐があったわ。緋朝はやっぱり優しいのね」
……俺って、ホント弱い男だな。
彼女の言葉につい笑顔になる。
チョコブラウニーを、もうひとつフォークで刺して食べた。
「じゃあ、お待ちかねの日記帳の話をしましょうか。
どこまで読んだのかしら?」
「たて子さんの話の途中だよ。水夜が箪笥に挟まれて、怪我をしたところ」
「あら、だいぶ最初のページで読むのをやめたのね。面白くなかったかしら?」
テーブルに置いた日記帳を水夜はペラペラとめくった。
「いやいやいや!面白い面白くないとかじゃなくて、まず霊を食べるってなんだよ。食べ物じゃねーし!」
「……そうね、緋朝にとっては食べ物じゃないわね。私にとっては食べ物なんだけど。でも、詳細を言うと、このチョコブラウニーのように、お腹いっぱいになるものじゃない。霊は私の形を作っているものなの。」
……話の意味が分からない。
水夜を見つめたまま、話の意味を理解しようと考える。
すると、彼女は頷いた。
「分かりにくいわよね。だって、霊を食べる女なんて、会った事ないだろうし。
いいわ、噛み砕いて話すから聞いて」
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