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「私は19歳の時に病気で一度死んだの。不憫に思った母が色々な死人を蘇らせる本を読み漁り、私は息を吹き返したんだけど……結局は素人がたまたま成功した呪いのようなもの。
私の体は不安定で、定期的に、霊が持っている気を食べないと、元の死体に戻ってしまう」
「死んだ……」
「そう、私は元死人。生き返ってから不思議な物が見えるようになり、不思議な力が使えるようになり、だけど霊気を食べないと生きていけないと分かったの」
水夜が死んでいるなんて。
そんな。
俺の前で、こんな流暢に話し、動いているのが、死体だなんて。
信じられない。
そして、言葉にならない。
それを見た彼女は無表情だけれど、優しく俺に話す。
「そうよね……そんな顔をするのは当たり前。だけど、本当なのよ。だから、私は霊の多い場所に点々と移動し、霊を食べ続けている。
う……ん、食べると言うより、吸い込んで取り入れると言った方が近いかしら」
「霊を食べないと、どうなるんだ」
「だんだん皮膚が崩れて、腐乱死体のようになるわ。一度長い間霊を食べなかった事があるの。徐々に体に裂けたような傷があちこちに出来て、崩れ始めたから慌てて霊を食べに行った事がある、フフフ」
ドジをした、くらいの感じでその話をする水夜にゾッとする。
霊を食べる死体なんて……ここにいる水夜こそ霊のようなものじゃないか。
と言うより、ゾンビ。
「あら、私が怖いの?死んだけれど、今はちゃんと心臓も動いているし、怪我をすれば血だって出るわ。
このチョコブラウニーが腐っていれば、お腹だって壊すのよ?」
彼女はフォークでチョコブラウニーを刺すと、半分口の中に入れて、咀嚼した。
「だけど」
彼女は一言呟くと俺を見る。
「私の体は病気や怪我に弱いの。それが原因で体が腐ってしまう事だってある。だから、あなたが読んだ箪笥に引っ掛けたような小さな傷でも、家に帰らざるを得なかったのよ」
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