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「みんな見てるのは、水夜が綺麗過ぎるからだ。他の男が寄ってきたら困るから。俺にくっついてろ」 「……やめて、恥ずかしいわ」 俺は水夜の肩を抱き締めるのをやめない。 彼女の歩幅が小さくなるので、俺は更に引き寄せた。 「何にする?帰ったら水夜が入れてくれる、お茶とで食べようよ」 「緋朝ったら…私をいじめてるわね…館に戻ったら覚えてなさいよ」 照れながら、小さな声で文句を言う姿も愛しくて、彼女の頭に軽くキスをする。 このまま、「ここの世界」で彼女と過ごす事が出来たらいいのに…。 俺は、彼女と歩きながら、何とか方法はないのか考えていた。 でも、そんな事はできるのか… 俺は生きていて、彼女は死んでいる。 この世界でも、水夜の館にいても、俺は歳をとっていく。それが止められない。
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