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ホッとしてはいるが、いずれは封印は解ける。 そして、安心してばかりもいられない。 日記で関わった人たちの様に、出来れば幸せに思って貰えるような、最後を迎えて欲しい人は、日記の中に沢山いるはずなんだ。 それは助けていきたい。 水夜と俺とで話してきた事だ。 でも、俺も水夜も互いの世界に、ずっとは居られない。 俺が日記の件で根を上げた時、きっと水夜との関係は終わりかも知れない。 根を上げるーーーそれは、歳を重ねて体力がなくなるとか、それから恐怖に打ち勝つことが出来ない、とか、それか、死ぬ、とか。 あと、それまで彼女と愛を育んでいけるのかだってある。 俺の自宅と、水夜の館が近所だからと言って、ホントに距離が近い訳ではない。 その距離が水夜との、これからの距離に感じてしまい、今後これをどう埋めていくか、俺1人で考えてもどうしようもなく、不安を連呼するのも、その不安を大きくするしかなかった。 「緋朝、相談があるの」 ぼんやり館の窓から外を見る俺に、水夜が声をかけてくる。
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