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「恨みや悪意とか、想いが強すぎて悪鬼になった霊が、満足して光の中に行ける事は、本当に珍しいし、難しい。でも、いい事なんす。こっちとしても、そういう解決が一番嬉しい事なんで、当たり前の金額っすよ」 「……そうなんだ」 説明されても、あまり実感は湧かない。 でも、いい事をして良かった、とは思う。 「そうだ、万屋(よろずや)から振り込み用の通帳とカードを作りましょう。5桁のパスワードを考えて欲しいっす!振り込まれた金は緋朝の世界でも使えますけど、普通の銀行では、勿論通帳もカードも使えないんで。緋朝の家の近くにATMを作りますから、そこで下ろしてくださいっす!」 「そんな…ATMなんか簡単に作れる…?」 「めっちゃ簡単!他の人には見えないし、使えないっすよ。勿論」 なんだか、ゲームの世界みたいに簡単に色々出来るんだな。 万屋(よろずや)ってすげえ。 伊蔵は使い古した肩掛けの布鞄から、何かを取り出した。 そして、俺の前に置く。 「とりあえず、この紙と、インクをお渡しするっす。左手全部にインクを塗って、紙に手型を押して欲しいんす。で、右下に自分のサインと。明日夕方取りに来るんで、それまでにしといてください」 「分かった。でも、明日俺は仕事だから、水夜に渡しててもいいかな?水夜、いい?」 「ええ、分かったわ」 水夜が小さく頷いた。 俺も頷く。 その後、伊蔵も2回コクコクと笑顔で顔を縦に振った。 「じゃ、今日の本題入りまっす」
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