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水夜は両手で、俺の手をギュッと握る。
小さくか弱い細い手だ。
「緋朝、その話を詳しく教えて欲しいわ。本当は私が体験したままをあなたが体験するハズなの。どうしてなのかしら?日記と何が違ったか教えて?」
「え……と、まず襖が閉まるハズなのに、閉まらなかった。そして、女が四つん這いで笑いながら迫って来たんだ。そこで目が覚めた。でも、言っとくけど、俺はあの日記をもう読まない!」
俺はもうあの日記を読みたくなかった。
もし、俺が本当に廃屋の気味が悪い女の所に行ってると言うのなら、尚更無理だ。
「緋朝、読むのよ。あの日記を」
「ぜっっったいにイヤだ!」
水夜の言葉にかぶりながら俺は頭を左右に振った。あれは、気持ち悪すぎるんだ。
「いいえ、読んで貰うわ。そんなに怖いと言うなら私もそれに付いて行くから。」
「絶対イヤ。水夜は分かんねぇよ、あの家に入るのを怖いと思ってないだろ?俺は怖い!」
ため息を深くつく水夜。
だけど、俺をまた見つめる。
「分かったわ。できる範囲で緋朝の言う事を聞くから読んでちょうだい。ね?」
「……っ」
可愛い顔でお願いはナシだろ。
無表情だけど、それがまた変に色気があるから、そんな目で見つめられると、こっちも目をそらせない……が。
「だ、ダメだ。俺は自分を理解した。怖いもんは苦手という事だ。今まで肝試しや怖い話をやったり聞いたりしてたけど、それは見えてなかったし、信じていなかったからだ。
今は水夜の色んな事も体験したし、日記であの目が縦になった女も見た、もう信じたし、怖いものも見たくない!」
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