190人が本棚に入れています
本棚に追加
俺について、ここへ入ってきた?
女の子は、無表情にこちらを見つめていた。
水夜はその女の子に近づいて行くと、しゃがみ込む。
「あなたのお名前は?どうしたのかな?」
女の子は何も答えない。
ただ、水夜を見つめている。
「んと…そうだ。お家の中へ入る?お菓子食べる?」
女の子は、無言で水夜の後ろで様子を見つめる俺を見た。
そして、数秒そのまま見続け、路地の向こうに駆け出した。
「あ!待って…」
女の子は、俺の世界の方に行ってしまったのか、フッと消える。
「誰、かしら…」
「いや、全然分からない。霊なのか?」
「……分からないわ、半分生きた人間のエネルギーを感じるし、半分は霊のような、そんな気を感じる。生き霊のような」
俺たちはしばらく女の子を待っていたが、戻ってくる様子もなく、屋敷の中へ入る事にした。
「俺たちを傷つける様子もなかったし、敵という感じは感じられなかったな」
「ええ。でも、不審がっていたわ。
……ここにきたのは偶然かも知れない。何かあるならまたきっと戻ってくるわ」
薄く微笑む彼女に、俺も頷く。
「そうだな、あ、これ、お土産。出張先で買ったお菓子と、近くのパン屋で美味しいって人気のジャム買ってきたんだ」
「まぁ、楽しみね!お茶を入れるわ。何が合うかしら」
最初のコメントを投稿しよう!