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「……ゆー…らん」
なんだ?ゆーらん、て。
小さい子だから、ゆうちゃんと、発音できないのか?
「ゆー、ちゃん?ゆうちゃんっていうの?」
よく見ると、5歳くらいの女の子にしては、細い。
ガリガリ。
健康的な、ふっくらとした脂肪がない。
肌もカサついていて、ホントだったら、もっと可愛いだろうに、頬がコケたところが、黒くくすんでいて病的だ。
両手を胸の前で結んでいるけれど、骨張った指が、可哀想だった。
……両手で小さく、何か持っている。
何か知りたいけれど、
でも、冷静にはなれない。
怖いのだ。
「ゆ、ゆうちゃん?な、何か用があるのかな?俺が助ける事はできる?」
ただ、俺を見つめて、棒立ちになっている女の子に"ゆうちゃん"と声をかけてみるが、全く反応が無い。
心臓が壊れそうなほど早鐘を打っている。
俺たちは、しばらく見つめあっていた。
俺に焦りはあっても、彼女にはない。
ただ、無表情に俺を見ている。
だけど、彼女がとうとう腕を動かし、手のひらに包んでいる何かを俺に差し出した。
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