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細い路地を潜り抜けると、水夜が扉の前で待っていてくれた。 俺を見ると、駆け寄って来てくれて、心配そうな表情をする。 「緋朝っ…」 「大丈夫、大丈夫。ビビったけど…でも、これ」 俺は、指輪を水夜に見せた。 彼女は「見てもいい?」と俺から指輪を受け取ると、角度を変えて、それを見た。 「……高価な指輪に見えるけど……、何で指輪なのかしら? ……とりあえず中に入りましょう」 俺は館の中に入る前に、一度後ろを振り返ったけれど、前のように女の子は居なかった。 この間のように、エントランス近くのテーブルを使う。 女の子がいつでも来ていいように。 俺は、その子が俺の前に現れた事を詳しく、水夜に話した。 「……その時に彼女が話した言葉が、日本語には聞こえなかったのね。」 「うん。ほぼ聞き取れなかったんだけど、初めにウォーと言ったのと、最後にないない…そう言ったと思う」 俺たちは謎の指輪を見つめた。 多分、きっと水夜も同じ事を考えている。 ……宏則の所にいく時が来たのかもと。
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